2025/07/01
「留守番中に家を荒らしてしまう」「花火が鳴るとパニックになる」「来客があると興奮して手がつけられない」そんな愛犬の様子に戸惑った経験はありませんか?こうした行動は「しつけが悪いのかな?」と悩まれている飼い主様もいらっしゃいますが、実はそれは医学的に治療が必要な「不安症状」である可能性があります。
犬も人間と同じように不安や恐怖を感じる生き物です。特に花火や雷、飼い主様と離れる状況など、特定の刺激や環境変化が強いストレスとなり、異常行動につながることがあります。しかしこれらの不安症状は、決して珍しいものではなく、治療によって改善できることがあります。
今回は、犬に見られる代表的な不安症状とその原因、治療方法やご家庭でできる工夫について、ご紹介します。
■目次
1.犬の不安症状とは?
2.こんな症状でお困りではありませんか?
3.薬物療法による治療について
4.当院での治療の進め方
5.分離不安のトレーニング方法
6.まとめ
犬の不安症状とは?
犬に見られる不安症状には、大きく分けて以下の2つがあります。
<分離不安症>
飼い主様と離れることに対して極端な不安を感じ、問題行動を起こしてしまう状態です。留守番中に吠え続けたり、物を壊したり、トイレの失敗が増えるなど、日常生活に支障をきたすケースも多く見られます。
<パニック症状>
雷や花火、工事音、来客などの特定の刺激に対して、過度に恐怖を感じている状態です。突然震え始めたり、よだれが止まらなくなったり、物陰に隠れて動けなくなることもあります。
これらの症状はまったく異なるように見えますが、どちらも「不安」という感情が根本にあります。また、どちらのタイプも同じような薬物療法が有効であることが多く、適切な治療によって生活の質を向上させることが可能です。
こんな症状でお困りではありませんか?
以下のような行動が見られたら、犬が強い不安を感じているサインかもしれません。
<留守番時に見られる行動>
・家具やドアの破壊
・吠え続ける
・トイレの失敗
・前足や尻尾を過剰に舐めてしまう自傷行為
<音への過剰な反応(花火・雷・工事音など)>
・震えが止まらない
・よだれが大量に出る
・呼吸が荒くなる
・物陰に隠れて出てこない
・恐怖からの失禁
<来客時や病院受診の際の反応>
・興奮して吠えたり飛びついたりする
・攻撃的になる
・体が固まり動けなくなる
これらの行動は、単なる癖や性格ではなく、「不安」によって引き起こされる医学的な症状です。無理に我慢させる必要はなく、治療によって改善が見込める状態であるため、適切な対処が必要です。
薬物療法による治療について
犬の不安症状には、獣医師の指導のもとで使用する薬物療法が有効です。症状の種類や重症度に応じて以下のような投与方法が選ばれます。
<予防的投与>
花火大会や雷が予想される日、来客予定がある日など、あらかじめ強い不安が起こることがわかっている場合には、事前に服用することで不安症状を予防できます。これは一時的な使用で、当日のストレスを軽減するのに適しています。
<継続的投与>
日常的に強い分離不安が見られる場合や、慢性的な不安症状がある場合には、継続して服用することで症状を安定させる治療法が選択されます。長期間にわたる管理が必要なこともありますが、生活の質を保つうえで効果的です。
また、薬に対して抵抗がある飼い主様には、サプリメントという選択肢もあります。副作用のリスクが低く、軽度の症状や薬との併用に適しています。ただし、どちらの方法にも効果の個体差があるため、獣医師とよく相談しながら、最適な治療法を選ぶことが重要です。
当院での治療の進め方
当院では、まず詳しい問診を行い、愛犬の「症状の出方」「頻度」「きっかけ」などを丁寧にお伺いします。飼い主様が感じるちょっとした違和感でも、治療のヒントになることが多いため、安心してご相談ください。
また、動物病院に来ること自体が大きなストレスになる犬には、事前に薬を飲んでから来院していただく方法をご提案することも可能です。落ち着いた状態で診察が受けられるため、より正確に症状を把握することができます。
また、治療は一度きりで終わるものではなく、体質や反応に合わせて薬の量や種類を調整しながら、段階的に症状を改善していきます。飼い主様と獣医師が二人三脚で取り組むことが、犬の不安症状の改善において最も大切なポイントです。
「うちの子ももしかして…」と感じた飼い主様は、どうぞお気軽にご相談ください。少しでも症状が軽いうちに対応することで、よりスムーズな改善が期待できます。
分離不安のトレーニング方法
分離不安の治療では、薬物療法とあわせて以下のようなご家庭でのトレーニングも大切です。
・外出時や帰宅時に過度に声をかけない(出入りを特別視させない)
・帰宅後すぐにかまわず、落ち着いてから接する
・短時間の留守番から徐々に慣らす(最初は数分から)
・おもちゃや知育グッズで、ひとりの時間をポジティブに感じさせる
ただし、すでに強い不安症状が出ている場合、無理なトレーニングは逆効果になる可能性もあります。まずは不安を軽減する治療を優先し、そのうえで少しずつトレーニングを進めるのが理想的です。
まとめ
犬の分離不安やパニック症状は、単なる「しつけの問題」ではなく、治療によって改善できる医学的な症状です。適切な薬物療法やサプリメント、行動トレーニングを組み合わせることで、多くの犬が落ち着いた生活を取り戻しています。
また、不安症状を和らげることで、犬自身のストレスが減るだけでなく、飼い主様の気持ちの余裕も生まれ、家庭全体の生活の質が向上します。
当院では、行動診療を含む不安症状のご相談にも対応しております。もし、「うちの子、少し不安が強いかも…」と感じることがありましたら、無理に我慢させず、お気軽に当院までご相談ください。
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