2026/02/09
「動物病院で角膜に傷があると言われ、処方された点眼薬をきちんと使っているのに、一向に良くなる気配がない」「一度は良くなったと思ったのに、またすぐに同じ目をしょぼしょぼさせている」。このようなお悩みを抱えた飼い主様は、実は決して珍しくありません。
毎日治療を続けているのに回復が見られないと、「このまま治るのか」「もっと別の病気が隠れているのではないか」と心配になるのは当然のことです。しかし、犬の目の傷が長引いてしまう背景には、ただの“治りが遅い”だけでは片付けられない、明確な理由が存在しているケースがあります。
見た目では小さな傷に思えても、実際にはその傷を治りづらくする要因が隠れていたり、表面的な治療では届かない病態が進行していたりすることもあるのです。
そこで今回は、犬の目の傷がなかなか治らない原因と、それに必要な専門的な治療などについて、ご紹介します。

■目次
1.犬の目の傷(角膜の傷)とは?
2.「治らない目の傷」に多いご相談と注意すべきサイン
3.治らない理由①|SCCEDs(自発性慢性角膜上皮欠損症)
4.治らない理由②|逆さまつげ・まぶたの異常による刺激
5.見逃されやすい背景|基礎疾患やドライアイの影響
6.まとめ
犬の目の傷(角膜の傷)とは?
犬の目の表面には「角膜」と呼ばれる透明な膜があります。この角膜は非常に薄くデリケートで、外からの刺激や摩擦、乾燥などによって簡単に傷ついてしまいます。
角膜に傷ができると、以下のような症状が見られます。
・目をしょぼしょぼさせている
・涙や目やにが増えている
・白目の充血
・黒目が白っぽく濁って見える
軽度の傷であれば、点眼治療だけで数日から1週間ほどで自然に治癒する場合もあります。しかし、すべての角膜の傷が点眼だけで治るわけではありません。表面的な傷のように見えても、実際には治りづらい特殊な状態が潜んでいることもあるのです。
「治らない目の傷」に多いご相談と注意すべきサイン
実際に動物病院でよく受けるご相談として、以下のようなケースがあります。
・点眼治療を数週間〜数か月続けても改善が見られない
・一度治ったと思っても、すぐに同じ目に再び傷ができる
・通院しているが「もう少し様子を見ましょう」と言われ続けている
これらの場合、目の表面にできた傷そのものだけに着目していては解決しない可能性があります。治癒を妨げている根本的な原因が角膜の内部やその周辺、または全身状態にあることもあるため、注意が必要です。
また、このような状態を放置してしまうと、傷が慢性化して視力に影響が出たり、角膜が白く濁ったまま残ってしまったりする恐れもあります。そのため、少しでもおかしいと感じたら、早めに詳しい検査を受けることが大切です。
▼犬や猫の眼科疾患のセカンドオピニオンを検討すべきタイミングについてより詳しく知りたい方はこちら
治らない理由①|SCCEDs(自発性慢性角膜上皮欠損症)
犬の角膜の傷が治りにくい場合、最もよく見られる原因のひとつが「SCCEDs(自発性慢性角膜上皮欠損症)」という病気です。これは、軽度に見える角膜の傷がなかなか自然に治らない状態で、慢性化しやすいという特徴があります。
この病態では、傷の表面に「悪いかさぶた」のような壊れた組織が残ってしまい、その下に新しい細胞が入り込めない状態が続いています。つまり、新しい角膜の細胞が再生できない構造的な問題が起きているのです。
このような状態では、通常の点眼治療だけでは不十分です。まずは悪いかさぶたを取り除く処置を行い、角膜が再生できる環境を整える必要があります。また、重度の場合には外科的な処置が必要になることもあります。
また、SCCEDsは単純な傷とは異なり、状態に応じて複数の治療ステップを踏まなければならない病気です。そのため、一般的な治療では治らずに長期化してしまうことが多く、専門的な診断と処置が不可欠です。
治らない理由②|逆さまつげ・まぶたの異常による刺激
角膜に繰り返し傷ができるもうひとつの代表的な原因として、「逆さまつげ」や「まぶたの形の異常」があります。これは、まつげが正常な向きではなく、内側に向かって生えていることで、瞬きをするたびに角膜が物理的にこすられてしまう状態です。
この刺激が持続することで角膜が傷つき、何度も同じ場所に傷ができてしまいます。
「では、まつげを抜けば良いのでは?」と思われるかもしれませんが、実際にはそう単純ではありません。無理に抜こうとすると毛が途中で切れてしまい、その断面が鋭く尖ることで、かえって角膜を深く傷つけるリスクがあります。
このようなケースでは、症例に応じて麻酔下での安全な処置や、まぶたの形成手術といった外科的な対応が必要になることもあります。また、表面的な傷を治すだけでは再発を防ぐことはできず、根本的な刺激の原因を取り除くことが重要です。
見逃されやすい背景|基礎疾患やドライアイの影響
犬の目の傷が治りにくい背景には、全身性の病気や涙の異常が関係している場合もあります。代表的な例が「クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)」です。
クッシング症候群では、体内のコルチゾールというホルモンの影響で、コラーゲンが壊れやすくなり、角膜の治癒力が低下してしまいます。見た目にはわからない全身の異常が、目の傷の回復を妨げているのです。
▼犬のクッシング症候群の原因や治療の流れについてより詳しく知りたい方はこちら
また、涙の量が少ない「ドライアイ」も、角膜の保護機能が低下するため、傷ができやすく、治りにくくなる原因となります。乾燥した角膜は傷が悪化しやすく、小さな異常でも時間が経つにつれて慢性化することがあります。
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このように、角膜だけでなく全身の健康状態や涙の分泌量まで含めた総合的な評価が必要です。なお、当院では眼科診療に加え、こうした背景疾患の有無や、目の状態と全身症状との関連性まで含めた診断や治療を行っております。
まとめ
犬の目の傷は、時に自然に治ることもありますが、なかなか治らない場合や繰り返す場合は、明確な理由が存在していることがほとんどです。
SCCEDsのように特殊な構造異常が起きていたり、逆さまつげの刺激が続いていたり、全身の病気が隠れていたりと、単なる「傷」として片付けられない複雑な背景が潜んでいることがあります。こうした状態は、点眼薬だけでは改善せず、的確な診断と段階的な治療が必要です。
「このまま点眼を続けていて良いのだろうか」「もっと詳しい検査を受けたほうが良いのでは」と感じた飼い主様は、ぜひお早めにご相談ください。放置することで視力に影響を与えることもあります。
なお、当院では眼科診療に力を入れており、長引く角膜の傷の診断や外科的な対応も含めた治療を行っております。飼い主様の不安に寄り添いながら、愛犬にとって最善の治療を一緒に考えてまいります。
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